蜜蜂オヤジ。
第21章 10年の歳月…。
菫さんのオフィス兼店舗は
それはそれは
綺麗なイチョウ並木が並ぶ
大通り沿いにあった。
70歳の俺がおそらくは一人で入っていけるような
雰囲気の店ではもちろんなかったから
店のドアを開けるのには
かなりの勇気が必要だった。
大作はスーツのネクタイをキュッと締めなおして
簡単な身繕いをしてから
カラン…!
お店のドアを開いた…。
店内には20代の女性客が数名
いっせいにドアを開けた大作を
えっ?という目で眺めてきた。
大作は照れくささに
額に汗が吹き出してくるのを感じたが
近くの店員に
『すいません。私…寺山と申します。…あの社長の…』
と途中まで言葉をかけたとき
『ご無沙汰してます!わざわざいらしてくださって、ありがとうございます!』
となつかしい声が
後ろからかかった。
振り向いた大作の
視界には…
流行しているのであろう
自社ブランド【Sumire】のスーツを
着こなした
菫さんが立っていた。
10年前…
海から一方的に別れを告げられて
涙一杯で寺山家を出ていった
まだ少女の面影すらあった
お嫁さんだった菫ではなく
凛とした
自立する女性の雰囲気の漂う
香川菫がそこにはいた。
それはそれは
綺麗なイチョウ並木が並ぶ
大通り沿いにあった。
70歳の俺がおそらくは一人で入っていけるような
雰囲気の店ではもちろんなかったから
店のドアを開けるのには
かなりの勇気が必要だった。
大作はスーツのネクタイをキュッと締めなおして
簡単な身繕いをしてから
カラン…!
お店のドアを開いた…。
店内には20代の女性客が数名
いっせいにドアを開けた大作を
えっ?という目で眺めてきた。
大作は照れくささに
額に汗が吹き出してくるのを感じたが
近くの店員に
『すいません。私…寺山と申します。…あの社長の…』
と途中まで言葉をかけたとき
『ご無沙汰してます!わざわざいらしてくださって、ありがとうございます!』
となつかしい声が
後ろからかかった。
振り向いた大作の
視界には…
流行しているのであろう
自社ブランド【Sumire】のスーツを
着こなした
菫さんが立っていた。
10年前…
海から一方的に別れを告げられて
涙一杯で寺山家を出ていった
まだ少女の面影すらあった
お嫁さんだった菫ではなく
凛とした
自立する女性の雰囲気の漂う
香川菫がそこにはいた。