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ダメビト図鑑

第5章 通勤途中で…

駅員室では
イオリと
痴漢のそのひ弱そうな男は
別の場所でそれぞれ事情を聴かれたが…

男が事情を聞かれているほうから

『お願いです… …警察には言わないでいただけませんか?』

『まだ、子供が小さいんです… …小学生なんです!』

『……つい出来気心だったんです…。どうかしていたんです…!』

『私は家内に先立たれてしまって…。 ……ウウッ……。今日までもう4年間も男でひとつで育ててきてました…。どうかしていたんです…ウウウゥッ………』


どうやら
そのひ弱な男性は
奥さんに先立たれて
まだ小さい子供を抱えて今日まで
暮らしてきたのだろう…。

つい満員電車のなかで
抑えていたストレスや性欲が
イオリを見かけ
身体を密着していた状態で暴発したのだろう…


『反省しています!ああぁ………な、な、なんてバカなことを… …ウウゥゥゥ……』


男の後悔の念が
同じ部屋の反対側の隅にいた
イオリの耳にまで
届くうちに
イオリはなんだかその男が憐れに思えてきた。

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