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ヴァンパイアのCrazy Night

第2章 彷徨える客人

「…アァ」

低く唸るような、男の声。私の動きを阻むように、大きな冷たい手が、片足を掴んだ。

「…ゾンビ!?」

蹴飛ばして、なんとか退けるが、またも足を掴まれる。しかも、今度は大幅に数が増え、複数だ。

きっと…いや確実に、私が踏んでいるこの地面は、ゾンビで埋め尽くされている。

「離せ!!離せって…うわぁ!」

一匹のゾンビにしがみつかれて、バランスを失う。生きる屍の山に埋もれ、鼻持ちならぬとんでもない死臭に苛まれる。あまりの嘔気に、失神しそうになる。

怪異の魔手は私の体に及び、皮肉を噛み付かれる。容赦ない激痛に、骨髄が悲鳴をあげた。

「…ぅ、あぁ!くっ…」

一匹、また一匹と、数多の怪異に体を噛み付かれる。去るも地獄、残るも地獄…。窮地に墜ちた迷える子羊は、人ならざる怪異の餌食となる…。

この目に余るような地獄絵画に、誰もが身慄いするだろう。

意識が、朦朧としていく…。虚ろな瞼が閉じようとした時、頭によぎったのは…家族の優しい笑顔だった。

刹那、潜在能力が覚醒する。

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