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ヴァンパイアのCrazy Night

第2章 彷徨える客人

左方にある深い茂みへと入り、丈の長い草を掻き分ける。草が勢いでちぎれてしまうくらい、ただ一心に逃げる。草の先端が顔や腕、脚をなぞり、皮膚を切る。痛みなど、目もくれない。何度も足に草が絡まって、転倒する。それでも、何度も立ち上がる。果てのゴールなどないというのに。

猛然と疾走しながら、ちらと後ろを振り返ると、怪異はいなかった。安堵の胸を撫で下ろし、前を向いた瞬間、

「っ!!」

体が、墜ちていく。大穴に嵌ったのだ。片手を上方へ差し伸ばすが、虚しく空を切った。

深い深い…何処までも、ただ墜ちていく。外界への穴が、遠のいていく。

そして、ドサッと、穴底まで墜ちた。不思議とあまり痛みは感じなく、地面は凸凹した感触だ。

怪我もなくホッと一息吐いて、周りを見渡すが、一切の光は無く、暗闇に包まれている。

まずは、此処から脱出しなければならない。でも、どうすればいい?こんな怪奇の森で、私を助けてくれる人なんていないだろう。よじ登るか?いやいや、それはまさに無謀である。頼りになる光源も持ってない上に、外界までの道のりは果てしない。しかし、他に方法はないだろう。このまま此処にいても、餓死するのが末路だ。

とりあえず、やってみなければ分からない。なんとか手探りでよじ登ってみよう。

そう、立ち上がろうとした時だった。

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