ウサギちゃんとオオカミ少年
第4章 本音で話そう
新谷君は嘘を言わない。高校生で嘘つきカウンターが2桁前半の子を他に見たことがない。僕はその事が気になって…。
最初は無意識でフィンの帽子を頻繁に被っていた。いつしか話し掛けてくれるのを待っている自分に気が付いた。新谷君のフェイスブックを盗み見る様になり、姿を探し見つけると思わず目で追ってしまう。最近では、目で追うどころか実際追いかけてしまう自分が居る。
そして今日は、高校2年の修了式。春休みに入る前にいっぱい見ておこうと思っていただけなのにプールの裏まで、追いかけて来てしまった。そして修羅場に茂みから乱入して今に至る。
「もうちょっとで新記録達成だったのにぃ~!こんのぉ~…泥棒ウサギッ!!!」
「やっべぇ!逃げろ!ウサギちゃんコッチ!」
「まてゃコラァ~!ギャー!!」
僕らは走った…。
野山を駆け抜ける風の様に…。
冬眠から覚め、春の繁殖期を迎える喜びを歌う様に走った…。
「はぁはぁ…上手く撒けたかな?…はぁ…ちょっと待ってね。ココの窓の鍵が…」
そういって窓を押しながらガンガンと叩くと…ガチャンと金属音がした。僕達はヒト気の無い校舎の一室に窓から忍び込んだ。すると安心したのかケタケタと新谷君が笑いだした。
カッシャン!
「一応鍵閉めとこ……クスクスッ…はぁ~怖かった…クククッ…アハハッ!ギャー!ってハハハッ言うか?やべぇツボった腹痛てぇ」
「クフフッ本当…怖かったハハッ」
僕もつられて笑った。すると新谷君の手が僕の頬を包んで居ることに気が付く。ハッっとして新谷君を見上げると…
「可愛ぃ……さっき言った事…俺は君の事が気になってる…本当だよ」
ウン知ってる…だってカウンターが増えてないから…。
「最近よく見かけるんだ…それで…気になって…こんなことに巻き込んでゴメンね」
それは、僕がつけ回してるからだよ…。