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男と女の螺旋階段

第1章 男と女の螺旋階段

毎朝の通勤電車を1本速くしたり遅くするだけでもその混み具合いは異なる。
俺は空席を見つけるとすぐにそこを確保した。
電車が揺れて隣りに座っていた女が本を落とす。
文庫本だったがカバーをしてあった。
俺は手早く拾うとその女に渡してやる。

この時、何気に本の中を見た。

「すみません、ありがとうございます」
やや小太りで、それほど美人でもないが白い歯が印象的である。

「ほう、松本清張ですか」
「………」
約25年ほど前に亡くなった我が国を代表する作家である。
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