テキストサイズ

私と飼い主のはなし

第3章 初めてのおつかい


澤田くんは顔を赤くして照れたように笑った。
澤田くんと会話らしい会話をしたのは初めてかもしれない。
あんまり私は男子と話さないっていうのもあるけど、澤田くんは男子にも女子にも人気者で黒髪の短い髪がとてと爽やかでかっこいい。
いつも周りに人がいるから私なんかが話し掛けることもできなかった。

「あ、わり、850円になります」

「う、うん…」

財布を取り出すためにいったんからだから鞄をはなさなちゃいけない。
知らない人でも恥ずかしいのに、クラスメートに見られるのなんて…でも
ゆっくり身体から鞄を離して鞄から財布を取り出す。
やっぱり澤田くんの視線が胸に突き刺さる。


「ふ、藤野…」

「わ、私ね、今日下着つけるの忘れちゃって…!」

「そうなんだ、でもさ、その格好…まずいって…ちょっと待ってて!」


なるべく私の方を見ないで耳まで真っ赤にさせて澤田くんはどっかへ行ってしまった。
一分くらい立っておまたせ!と走ってくる澤田くんの手にはジャージと傘


「汗臭せーかもしんないけどよかったら着てけよ!雨もまだふってるからさ!」

「で、でも澤田くんが…」

「大丈夫だって!藤野のそんな姿見られるほうが嫌だから!」

「え…?」

それってどういうこと?
顔を上げると相変わらず真っ赤な顔で私から視線をそらす澤田くん


「ありがとう….」

折角の澤田くんのご好意なので傘とジャージを受け取って制服の上に羽織る。
それを確認した澤田くんはほっとしたように私を見て照れ臭そうに笑った。

「俺さ、藤野とそんな喋ったことないじゃん….ずっと話したいって思ってたんだよね、だからさ、これからもよかったら仲良くしてくんね?」

そんな事思われてるなんて知らなかった。
私まで何だか照れ臭くなって顔が赤くなる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ