私と飼い主のはなし
第7章 彼じゃなくて
ガラッ
「誰も居ない、か」
頭のなかでこれから起こる事を想像をしながらやっとの思いで教室に入ると、当たり前だけど教室は鎮まりかえっていて誰もいなかった。
もし、誰かいたらそれはそれで大変だ。
だっていまの私の姿を見られる事になるんだから。
肌に張り付いた体操着をいますぐ脱ぎたい衝動になるが肩に掛けられた澤田くんのジャージの香りがそれを抑えた。
「澤田くん…」
私のためにわざわざジャージを取りに来てくれたんだ。
これでジャージを借りるのは二回目だ。
ゆっくりと澤田くんの席に近づく。
慌ててジャージを取り出したのだろう。鞄がひっくり返ってごちゃごちゃしている。
そんなに急いで…私のために…
くちゅ…
私は無意識に澤田くんの机の角にあそこを当てていた
ジャージの香りが麻薬のように頭をくらくらさせる。