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水曜日の薫りをあなたに

第1章 水曜日、その香りに出逢う


 ふと、背後にあの男が立っているのを想像した。鏡越しに微笑む男は、上質なスーツを脱ぎ捨て、ネクタイを乱暴に抜く。そのワイシャツの下にはきっと、ほどよく鍛えられているはずの引き締まった上半身が――。

「やだ……痴女」

 かすかな呟きは妙な艶めきを孕んでいて、薫は唇を引き結ぶ。


――「薫ちゃん」


 あの心地のいい低音が、鼓膜をくすぐる。そんな錯覚の中で、『いい香りだ』と囁く声が聞こえる。

「……っ」

 右手が、迷うことなく胸から腹を這った。ショーツの内側に侵入し、茂みの奥の蕾をとらえる。表面は濡れていないが、割れ目を探れば、花弁の奥に潜んでいる蜜がとろりと指に纏わりつく。掬って秘芯に塗りつけながら円を描き、左手はブラジャーのカップをずらして硬く膨れた頂をつまむ。

「ん……」

 薫は鏡の中の自分から逃れるように、きつくまぶたを閉じる。
 この手に優しく触れた、あの人の温かな手の感触を思い起こして。この身体の後ろからたくましい腕を滑らせ、秘密の場所を弄ぶ長い指を、想像した。

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