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雪に咲く花

第10章 深いきずあと

泣きつかれて布団にもぐっていると、ドアがノックされ美紅が入ってきた。
「どうしたのよ?夕食の支度手伝ってもらおうと思ったのに」
「頭痛いんだ。俺、夕飯いらないから」
「あら、また風邪ひいたの?」
美紅が雪斗の額に手をのせようとする。
「いいから、ほっといてくれよ!」
顔を見られたくなくて、思わず美紅の手をはねのけた。
「雪斗……。何かあったの?」
美紅が驚いて心配そうに声をかける。
雪斗は決まり悪くなり小さい声で呟いた。
「ごめん……。具合が悪いだけだから。今はそっとしといて」
「また、後でくるね」
美紅が部屋を出ていった。
悲惨な出来事をだれにも打ち明けられず、姉に八つ当たりしてしまったことに後味の悪さを感じた。

しばらく時間がたって、激しい足音が聞こえドアが力強く開いた。
兄の海斗が入ってきたのだ。
「おいっ!雪斗、起きろ」
布団をはがし、雪斗の腕を掴んで無理やり起こした。
「何だよ?」
「仮病使ってんじゃねえよ!ちょっとこい。話がある。」
「何なんだよ?痛いじゃないか!」
海斗が強引に、もがく雪斗を居間に連れだした。

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