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雪に咲く花

第10章 深いきずあと

居間に、連れてこられると、厳しい顔をした美桜がいる。
「雪斗、座りなさい」
雪斗が椅子に座ると美桜が尋ねた。
「あんた、今日学校行かなかったそうね。今日、担任の先生から電話があったのよ」
雪斗はどきっとして何も言えない。
「お前が今日、街中ぶらぶらしてるの近所の人が見たそうだ。姉貴と俺がどんな思いで、働いていると思ってるんだ?」
海斗も怒りをぶつける。
運悪くばれてしまったのだ。
前回は美紅の機転で丸くおさまったが、都合のいいことは続かないものである。
美桜も海斗も両親を亡くしてから進学を諦め下の妹弟のために働いてきたのだ。
怒るのも無理はないだろう。
でも……。
「あんたは、昔から、後先考えずいきあたりばったりで、学費だっていくらかかると思ってるの?」
「そうだ!第一お前は末っ子だからって甘ったれてんだ。美紅だって家事を手伝ってくれてんだぞ。悪いと思わないのかよ?」
「お兄ちゃんもお姉ちゃんもやめてよ。雪斗はね……」
「……知らないくせに」
美紅が口を挟もうとしたとき雪斗がつぶやいた。

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