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雪に咲く花

第10章 深いきずあと

ある日、叔母の財布から一万円札が数枚抜きとられるという出来事があった。
「図々しい子だね。あれだけ面倒見てやったのに!だから他人の子供を引き取るのなんか嫌だったのに!」
叔母は何も確かめもせず雪斗を真っ先に疑った。
更に雪斗の頬を何度も叩き、寒空の中に放り出したのだ。
雪斗が僕はやってないと強く訴えても聞き入れてはくれなかった。

「帰りたい。お兄ちゃんとお姉ちゃんに会いたいよ」
雪斗は兄姉たちが住む家へと向かったのだ。
駅員の目を盗んで電車に乗り込むことは出来たが、さすがに降りるときに見つかってしまい交番に保護されることになった。
迎えに来た美桜は、家に連れ帰ったのだ。
雪斗は泣きながらいきさつを話し、ここに帰りたいと訴えた。
美紅も自分が面倒をみるから雪斗を家に戻してあげてと頼んだ。
しばらくして、叔父から電話があり、
「すまない。あいつの財布から金を抜いたのは私だ。雪斗に可哀想なことしたお詫びと言ってはなんだが……」
資金援助を少しならするから雪斗を引き取ってほしいと言い出したのである。
正直、叔父も心苦しかったのだろう。

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