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雪に咲く花

第10章 深いきずあと

両親がいなくなっただけでも辛すぎるはずだった。
兄姉たちは、末っ子の弟だけを手放し、居心地の悪いところに放りこんでしまったことに心を痛め、再び雪斗と暮らすことになったのだ。
兄姉たちの話を聞いた亘は、雪斗のうわごとを思い出していた。
『……やだ。お兄ちゃん……お姉ちゃん……行っちゃ……やだ一緒に……』
雪斗の言葉を耳にしたときには理解出来なかったが幼いときのことを夢に見ていたらしい。
両親がいないながらも雪斗は兄姉たちに大切にされてきたのは勿論だが、この兄姉弟の中にもそんな複雑な過去があったのだ。
「結局、よかれと思ってやることが雪斗を傷つけちゃってるのよね」
「姉貴だけが悪いんじゃないさ。俺だって同じだ」
美桜と海斗が続けて言った。

3日ほどしたあと、雪斗の熱が下がり兄姉たちは、雪斗の頭を撫でながら謝罪したのだ。
「雪斗が苦しんでいるの何も知らなくて、傷つけてごめんね」
「雪斗、殴って悪かった。お前を虐めたやつ、やっつけてやるからな」
全てを知られたことに決まり悪さを感じながらも、兄姉の優しさに雪斗は泣きじゃくった。
亘はこの兄姉弟たちの暖かい光景を、羨ましく感じていた。

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