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雪に咲く花

第12章 亘のきずあと

男性はこの中華料理屋の店主であり、なんと亘の母親がこの店で働いていたという。
しかし彼の母親は突然病に倒れ、医者から余命いくばくもない不治の病だと診断された。
店主はたった一人の子供である亘をようやく探しだし、母親に会わせたいと考えた。
しかし、自分を捨てた母親を憎んでいる亘は、頑なに拒絶したというのだ。
「亘、だからこの間……」
店主の話から、雪斗はファミレスでの亘の様子がこのような事情ということが分かった。
店主は何か書かれたメモを持ってくると雪斗に渡した。
「これは亘君の母親の入院先だ。これを渡して一度会いに来て欲しいと伝えて貰いたい。もう彼女には時間がないんだ」
店主が頭を下げた。
「そうだったのか?そういうことなら俺が首に縄つけても亘兄を引っ張ってきますよ。任して下さい」
颯人が胸を叩く。
「うん、これはなんとしても亘をお母さんに会わせないと駄目だな」
雪斗は、実の母親が生きているのなら必ず会わせるべきと考えていたのだ。
だって自分も颯人も、生きている両親には二度と会えないのだから……。
「有り難う。自分の力では亘君を説得出来なくてね。どうかよろしく頼むよ」
店主が再び頭を下げた。

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