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雪に咲く花

第12章 亘のきずあと

「すまないが、こんなものは必要ない」
雪斗が中華料理屋の店主から頼まれたメモを渡すと、亘はぶっきらぼうに言った。
「俺の親は福原の両親だけなんだ。そんな人はアカの他人だ。関係ない!」
予想以上に亘は頑なである。
「亘兄の気持ちもわかるけどさ今会わないと、もう一生会えなくなるんだぜ」
「そうだよ。だって亘のお母さんはまだ生きているんだよ。俺も颯人も親が死んじゃって会えないんだから今すぐ会いにいくべきだ」
「お前らと一緒にしないでくれ」
雪斗と颯人の説得に亘が冷たくいい放った。
「えっ!?」
「亘兄何言って!?……」
呆気にとられる雪斗たちをよそに、亘は吐き出すようにまくし立てた。
「確かにお前たちは親を亡くして大変だったかも知れないが、親に大切にされた記憶しかないじゃないか!あの女は俺の誕生日に不倫相手の奥さんを殺した人殺しなんだ!」
「嘘……だよね!?」
「やっぱり……あの噂本当だったのか?」
思いがけない亘の告白に、二人は頭がおいつかない。

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