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雪に咲く花

第12章 亘のきずあと

病院につき、受付の案内で病室の前にたどり着いた。
病室のネームプレートにはメモにあった『野崎優子』と名前が書かれている。
「あれっ!君はこの間の……」
突然声をかけられて振り向くと中華料理屋の店主がいたのだ。
雪斗は驚いたが彼に会釈した。
「わざわざ来てくれたのかい。しかし、君一人ということはやはり亘君は……」
雪斗が静かに首をふる。
「そうか。やはり難しいな。まあせっかく来てくれたんだ。彼女に会ってあげてくれないか?」
店主は雪斗を病室の中に導いた。
「やあ、具合はどうだい?」
「達郎さん、いらっしゃい。今日は具合がいいから散歩でもしたい気分なんだけど、まだ寒いわね」
店主がベッドの女性に話しかけると、物腰の柔らかい声が聞こえた。
「あらっ!可愛いらしいお客さんね。どちらのお坊ちゃんかしら?」
女性が雪斗に気がつくと、あわてて挨拶をした。
「あのっ僕、亘いや亘さんにお世話になっている真柴雪斗って言います」
「そう……亘の」
雪斗を見つめる彼女は、病気でやつれているものの、どこか亘と似た優しい顔立ちをしている。

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