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雪に咲く花

第12章 亘のきずあと

優子が亘を身籠った頃、医者の卵だった亘の父親は医学を学ぶために海外に渡っていた。
優子は彼と一緒にいたかったが、当時、一人娘で両親を捨てられないことから恋人と別れることになったのだ。
亘を宿したのは恋人が海外にたった後で亘の父親は彼の存在を知らないのである。
優子は両親の反対を押しきり、亘を産んだのだという。
亘が小学校へあがって暫くは、両親が一緒に面倒をみてくれていたが、父親も母親も病気で相次いでなくなったのだ。
その日から優子は女手ひとつで亘を育てていかなければならなくなった。
幸い亘は手がかからず、賢い子供だったため、亘は一人でも大丈夫と安心してしまっていた。
「あのときは疲れきっていて周りが見えなくなっていたのよね」
優子は亘と別れなければいけなくなった理由を語りはじめたのだ。

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