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雪に咲く花

第12章 亘のきずあと

帰り道、雪斗は店主の柏木のトラックで送ってもらうことになった。
「無理もないが二人とも頑なで難しいな」
柏木も何も出来ずに悩んでいるようだ。
「あのひとつ気になってたんですけど……」
「何だい?」
「柏木さんて亘のお母さんと再婚したんですか?」
雪斗の質問に柏木は苦笑して答えた。
「いや、彼女はただの商売仲間だ。プロポーズはしたんだがね……」
柏木も壮絶な過去があったようで優子との出会いを語りはじめた。
柏木は昔、サラリーマンだったのだが、長年勤めていた会社を解雇され、再就職もうまくいかず酒に溺れていた時期があった。
そんな彼の様子に愛想を尽かした妻は離婚届けをおいて息子とともに出ていったのだ。
その後、生活に困った柏木は知り合いのラーメン屋に勤めることになった。
ある日優子がラーメン屋を訪れてきた。
柏木が作ったラーメンを美味しいと涙を流す優子を見て、一目惚れをし、彼女に交際を申し込んだのだ。
しかし、彼女は前科もちで、生き別れた息子がいることを彼に全てを話して交際を断ったのである。

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