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雪に咲く花

第12章 亘のきずあと

家に帰ると兄姉たちが何やら、ざわざわしていた。
「姉貴は年上のくせに泣き虫だったんだよな。美紅のほうが肝っ玉太いぜ」
「何よ!海斗が悪いんでしょ!」
「雪斗、雪うさぎみたいで可愛い」
久しぶりに兄弟が揃ってじゃれあっているようだ。
「あら、雪斗待ってたのよ。いいもの見つけたの」
美紅に手招きされてリビングに行くと、テレビの画面になんと真柴家の子供時代の光景が映っていたのだ。
美紅が掃除をしているときにビデオテープを見つけたらしい。
海斗がテープを巻き戻して再生した。
「ほら、あれが雪斗よ」
モコモコのうさぎの着ぐるみを着た雪斗が、四つん這いになって床を歩いているのだ。
この画面の中はクリスマスイブ、つまり雪斗の一歳の誕生日なのである。
両親の姿もあり懐かしさで胸がいっぱいになる。
「このときから好奇心旺盛だったのね」
歩きながら雪斗はぬいぐるみや座布団、テレビのリモコンを叩いたり匂いを嗅いだりしている。
「まるで、仔犬みたいだな」
「これが俺なんだ。可愛いなあ」
「自分で言ってどうすんだよ」
海斗が雪斗の頭を軽く叩いた。

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