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雪に咲く花

第12章 亘のきずあと

一通りの告白が終わると母は何かつかえたものが取れたように優しく微笑んだ。
『辛いこと聞かせてしまったわね。今度はあなたとの思い出について話させてね』
公園で一緒に遊んだとき、鳥や虫などに興味を持ち次々と質問責めにあったこと、
夏祭りで花火を見て瞳を輝かせていたこと、
幼稚園の学芸会に行けなくなって泣いたこと、
その後母親の前で、学芸会でやった森の熊さんの姿を披露したことなど
次から次へと語っていったのだ。
母親が話す思い出の数々には思い当たることもあった。
凍りついて見えなくなっていた思い出が亘の心に蘇ってくる。
更に画面の中の母が続けた。
『亘、今日はあなたの6回目の正しい日付の誕生日ね。プレゼントを雪斗君に渡しておいたから気がむいたら受けとってちょうだい。それと雪斗君て素直でいい子ね。大切にしてあげてね。

長いこと話を聞いてくれて有り難う。

それと亘
誕生日おめでとう

母が柔らかい笑顔のまま画面の中から消えていく。
亘はしばらく涙目になりながら震えていた。

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