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雪に咲く花

第12章 亘のきずあと

『亘、元気でいるかしら?あなたも私より背が高くなって立派な大人になったんでしょうね』
画面の中の母が語り出した。
『今更だけど、あなたにずっと謝りたいと思っていたの。これから話すこと、辛いことだけど聞いて欲しいの』
母が亘を身籠ってから、最後に別れた日までのことを告白した。
亘の父親が海外に渡ってから亘を宿したこと、
一人でも亘を生んで育てようと決意したこと、
母の両親がなくなり、一人で子育てする不安と寂しさから不倫に走ってしまったこと、
不倫相手の妻に亘のことまで罵られつかみかかった拍子に彼女を死なせてしまったこと、
そのことで亘を傷つけ、誕生日にトラウマをうえつけてしまったことへの謝罪をしたのだ。
『亘、誕生日の大事な日にあなたに辛い記憶を与えてしまってごめんなさいね』
うわべだけの事情しか知らなかった亘は衝撃を受けた。
母のことは許せるわけではないが、彼女にも複雑な思いがあったのだ。

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