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雪に咲く花

第12章 亘のきずあと

亘が母を亡くしてから数日がたった。
葬式は身内だけのこじんまりとしたものだった。
明日が休みなので亘の家に雪斗は泊まることになったのだ。
「雪斗、お前のお陰で今度は自分の誕生日が楽しみになりそうだ。ありがとな」
亘が雪斗に礼を言った。
結果的に母の命日が誕生日となってしまったが、母とのしがらみも和らぎ、絆を感じる事が出来たのだ。
「俺のほうこそ亘には何度も助けてもらったし何かお礼がしたかったんだ。それに亘の寂しそうな顔を見るのは辛いから……」
亘が雪斗を抱き寄せ唇をふさいだ。
「雪斗、お前だけはいなくならないでくれよ」
唇を解放すると亘は言った。
「いなくなるわけないじゃないか。俺はずっと亘のそばにいるから」
雪斗の言葉に亘が再び抱きしめた。
今まで、怯えた仔犬を包み込んでくれるような感触だったが、今の亘は子供のように甘えているような感じである。
賢くてしっかり者の亘も、心に弱さを持った亘も、全部受け止められるようになりたいと雪斗は思っていた。
少しずつ成長してきた雪斗によって、亘の悲しみも癒されていったのだ。

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