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雪に咲く花

第23章 黒沢叶多の思い

亘は、雪斗の眠っている病室のベッドの前に座っていた。
地下室での、拘束から解放された後、雪斗に駆け寄り抱き寄せた。
雪斗は安堵の顔を見せたが、長時間の暴行によるショックと疲労のため、亘の胸の中で、気を失ったのである。
そのまま、病院に運ばれ、高熱を出し意識は失ったままだ。
光多が刺した斉藤は、幸い、傷が浅かったため、命に別状はなかったそうだ。
あの後、狂っていたように叫んでいた光多が、その後どうしているのか、まだ分からない。
雪斗の兄姉達は、突然起きた弟の事態に驚きと動揺を隠せずにいた。
「雪斗、ごめんな。結局、お前をちゃんと守ってやれなかったな」
雪斗を巻き込まないために、距離をおいた結果が裏目に出てしまったのだ。
黒沢から、雪斗が亘のことで、学校で酷いいじめを受けていたと聞いたとき、心が激しく傷んだ。
こんなことなら、突き放したりせずに、そばにいて見守ってやれば良かった。
後悔と自責の念に、かられていると、病室のドアをノックする音が聞こえる。
兄姉が、訪ねてきたのだろうか?
「失礼します」
ドアが開き、黒沢が顔を出したのだ。

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