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雪に咲く花

第23章 黒沢叶多の思い

「光多があんなに歪んでしまったのも、真柴がこんなことになったのも、僕にも責任があるんです」
黒沢が雪斗の顔をのぞいて言った。
今の黒沢は、いつもの分厚い眼鏡でなく、茶色い縁の眼鏡をかけている。
「どうしてだい?」
「もっと早く、たった一人の弟として、光多に名乗りをあげていれば良かった。光多は学校でも人気者だったし、幸せに暮らしているとばかり思ってたんです。あんなに辛い思いをしていたなんて……」
光多が、受けてきた仕打ちを聞いたとき、黒沢は涙がとまらなかった。
やはり、双子だから、心が通じるのだろうか?
光多の寂しく苦しい気持ちが伝わってくるようだったのだ。
「こんなことなら兄弟として、あいつを支えてやればよかった」
黒沢が悲しみを含んだ瞳になる。
「ところで、光多君はどうしてるんだい?」
「光多は、自分を失ってしまったんです」
斉藤を刺した後、狂ったように叫んだかと思えば、突然死んだように動かなくなったらしい。
今までの記憶を全てなくし、自分がどこの誰か分からなくなったそうだ。

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