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雪に咲く花

第30章 招かれざる客

4月に入り、雪斗は新入社員として新しい道を歩くことになった。
あどけない顔立ちの着なれない背広姿に、海斗や美紅は笑って茶化した。
「お前が背広着ても、まだ学生服着てるみたいだな」
「本当にね。背広が似合う顔じゃないわね」
「失礼だな。せっかくの晴れ姿なのに」
雪斗が、頬を膨らませる。
ぎこちない背広姿を身につけ、雪斗の社会人生活は始まったのだ。

暫くは、研修期間が設けられ、雑用などをこなす毎日だ。
コンピューターを扱う仕事のため、雪斗のような高卒者は数人しかいない。
10人ほどいる新入社員は、大学や専門学校を出ているものが多く、知識の違いに戸惑うこともある。
しかし、美桜が、ようやく嫁いで家を出ていき、美紅も大学に通い始めたため、稼ぎ頭は海斗しかいないのだ。
金を稼ぐためには仕方ないと諦めるしかない。
亘も定時制高校の教師を務めることになったため、帰宅時間も遅く、週末の休みでないと会うことが出来ない。
「もう少し、お互いに落ち着いたら、もっと広い部屋を借りて一緒に住もう」
亘から、同棲することを持ちかけられ、そのために自分も頑張ろうと決心した。

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