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雪に咲く花

第31章 ポーカーフェイスの心

雪斗は、悠希の出現により、亘と思うように過ごすことが出来なくなったことに苛立ちを感じていた。
「よう、どうしたんだ?浮かない顔して」
同期であり、同じ部署に配属になった松田直樹に肩を叩かれた。
彼も雪斗と同じく高校卒業組であることから、すぐに仲良くなったのだ。
「いや、何でもないよ」
亘とのことは、彼には何も話していない。
男同士で付き合っているなどとは、普通に女子と付き合いをしている直樹には、理解して貰えるかどうか分からないからだ。
「ところで、今夜、俺達の歓迎会に広報部の黒崎さんもくるらしいぜ」
直樹が、話題を変える。
「黒崎さんて、あの眼鏡かけた無愛想な人?」
黒崎という男性は研修のときに、一度だけ関わったことがある。
かなり、優秀な人物らしく、画像処理やイラストを描くセンスがあると評判だ。
その関係に興味のある雪斗は、何度か黒崎に話しかけた。
「センスいいですね。僕も写真に興味あるから、こんなことしてみたいな」
しかし、彼からは、
「仕事は趣味の延長で出来るような甘いもんじゃないんだ。そういうことがしたいんだったら、もっと会社のことも社会のことも勉強した方がいいんじゃない」
と無表情な顔で返されたのだ。

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