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雪に咲く花

第32章 すれ違いの始まり

「雪斗君、亘さんは?……」
大木と入れ替わりに、悠希が青い顔をして訪れた。
近親者には連絡をするようにと大木に促され、悠希にも知らせたのだ。
亘の義両親は遠くに住んでいるし、今は自分たちしか関係者がいない。
「頭を強く打って治療している」
「どうして、亘さんがこんなことに……」
「そんなこと、こっちが聞きたいよ!」
苛立ち紛れに悠希に当たってしまう。
颯人は睨むように悠希を見つめた。
どのぐらい時間がたったのだろうか?
大きな不安に包まれた時間が早く終わって欲しいと、3人とも願っていた。
亘と気まずい状態でいたことは、まだ完全に解決してはいないのだ。
もし、このまま何かあったら……。
「そんなの嫌だ」
颯人も悠希も、雪斗の呟きに、ふと顔を見たが何も言わないでいた。
亘が、どうか助かりますように……。
彼らの誰もが祈りつづけていた。

ようやく、治療室から医師が顔を出した。
医師の話によると、幸い、頭を打ったときの外傷はあるものの、脳内の損傷は見当たらないということだ。
今は、事故の衝撃により気を失っているが、直に目を覚ます確率は高いそうだ。
雪斗も颯人も悠希も、ほっとして肩の力が抜けていった。

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