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雪に咲く花

第32章 すれ違いの始まり

「良かった。亘、助かったんだね」
「ああ、後は目を覚ますのを待つだけだな」
「亘さん、本当に無事で良かった」
長い間の不安から解放され、3人は安心する。
もう、下手に意地を張らないで素直になろう。
雪斗の頑なな心が解放されていく。
「亘兄に、せっかくの俺の警官姿見てもらわないことには、死んでも死にきれないからな」
「颯人、その言い方、お年寄りみたいだよ。じじくさいな」
「いちいちうるさいぞ!まったく、生意気なやつだな」
緊張がほどけ、二人で冗談をかわせるほどになった。
そんな雪斗達とは対象的に悠希の心は沈んでいた。
亘は、今度こそ自分のもとから去っていってしまう。
いや、もうすでに遠ざかっている。
亘の心には、もう自分の入り込む余地などないのだ。
今度こそ、さよならをしなくてはならない。
亘が目覚めたとき、雪斗もいる前で、きちんと別れを告げることが出来るだろうか?
その後は、何を支えに生きていけばいいのだろうか?
このまま、ここを立ち去ってしまいたい衝動にかられる。
亘が無事であったことの喜びと、切ない思いに悠希は葛藤していた。

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