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雪に咲く花

第33章 亘の疑問

悠希は天に感謝をしたい気持ちでいっぱいになった。
亘には悪いが、彼が記憶をなくしたことにより、雪斗の思いが消えたのだ。
しかも、自分を突き放していた亘に、今は必要とされている。
今度は、自分にチャンスが回って来るかも知れない。
一度は、亘を諦めようとした悠希だったが、亘が事故にあい、雪斗の記憶まで失ったと知ったときに魔がさしたのだ。
このまま、雪斗と恋人同志だったという証拠を消してしまえばいい。
幸い、事故のときに、亘のスマートフォンは破損し、雪斗の連絡先も履歴も残っていない。
後は、亘の部屋にある、雪斗との思い出のアルバムを処分してしまおうと思い付いた。
たまたま、部屋を掃除した時に、見つけたのだ。
棚に並んでいたアルバムには、二人の楽しそうにしている姿が何枚も写っている。
「もう、雪斗は心の中にいないんだから、こんなもの必要ないよね」
資源回収の日に、新聞と一緒にアルバムまで出してしまった。
「今度こそ、雪斗なんかに亘さんを渡さないから」
やっと、雪斗よりも近い距離に亘は来ている。
亘に思いを寄せるあまり、悠希は悪魔に魂を売ったのである。

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