雪に咲く花
第38章 亘の空白
彼とその恋人をのせたバスが事故を起こしてしまい、二人は病院に搬送された。
幸い、彼の方は軽傷だったが、恋人の方は意識不明の重体だ。
しかも、彼は上京してからの記憶を失ってしまったのである。
当然、恋人のことなど覚えているはずもない。
その事を知った主人公の心に魔がさし、自分が彼の恋人であると偽り近づいた。
大学時代からの記憶のない彼は、昔馴染みの彼女に安心感を覚え、気持ちを受け入れるのだ。
「何これ?今の俺みたいじゃん」
小説のヒロインは正に自分の心情にそっくりなのだ。
続きを最後まで読むのをためらってしまう。
「どうせ幼なじみの記憶が戻って失恋する話なんだろ?明日返しちゃおう」
何とか亘から雪斗を遠ざけたが、いつか記憶を取り戻して離れていってしまうのが不安になる。
小説のラストを読めば、それが決定づけられるようで怖いのだ。
翌日、悠希は三浦に読みかけの小説を返した。
「どうだった?この小説」
三浦が質問する。
「主人公があんまり可哀想で読むのが辛かったです」
「そうか。でも、僕はこの主人公に惹かれるな。不器用だけど一途で、どこかほっとけなくてさ」
この時、三浦の言葉に、不思議と何か温かいものを感じた。
幸い、彼の方は軽傷だったが、恋人の方は意識不明の重体だ。
しかも、彼は上京してからの記憶を失ってしまったのである。
当然、恋人のことなど覚えているはずもない。
その事を知った主人公の心に魔がさし、自分が彼の恋人であると偽り近づいた。
大学時代からの記憶のない彼は、昔馴染みの彼女に安心感を覚え、気持ちを受け入れるのだ。
「何これ?今の俺みたいじゃん」
小説のヒロインは正に自分の心情にそっくりなのだ。
続きを最後まで読むのをためらってしまう。
「どうせ幼なじみの記憶が戻って失恋する話なんだろ?明日返しちゃおう」
何とか亘から雪斗を遠ざけたが、いつか記憶を取り戻して離れていってしまうのが不安になる。
小説のラストを読めば、それが決定づけられるようで怖いのだ。
翌日、悠希は三浦に読みかけの小説を返した。
「どうだった?この小説」
三浦が質問する。
「主人公があんまり可哀想で読むのが辛かったです」
「そうか。でも、僕はこの主人公に惹かれるな。不器用だけど一途で、どこかほっとけなくてさ」
この時、三浦の言葉に、不思議と何か温かいものを感じた。