
ながれぼし
第3章 冬以上春未満
海岸へと続くスロープを下った俺達の足元は砂。
空には…キラキラと輝く星。
綺麗だな…
って!そんな事どーでもいい!
智のチャラ男発言に、意識がぶっ飛びそうになったよ!
でも…冷静に智の話を振り返ると…
いや、念のため、念のため…ね?
「あのさ…それって恋愛対象が…女。ってこと?」
大「うん。」
迷いもない、曇り無き眼。
チーーーーン…………
…
…嘘だ
「…マジで?」
大「マジで」
喰い気味の即答。
マジのやつだこれ。
やっと…やっと裏技的にだけど『恋人』というボスを倒せたと思ったのに…
まさかの『ノンケ』という裏ボスの出現…
思わずその場にしゃがみこんだ俺。
智はというと、俺がしゃがんだと同時に腕を離す。
あ…と思ったときには
スロープに沿って続く壁のちょっとの凹凸を使って、トン。トン。トン。と軽やかに上の段へ上がって行ってしまった。
そして、そこから俺を見下ろして
大「てことだけど、どうする?やっぱ諦める?」
そう、言い放つ。
…
諦める?
俺が?
悪いけど、もう俺に諦めるなんて選択肢無いんだよね。
貴方からの挑戦状。
受けて立つ。
ぐっ。と足に力を入れて立ち上がり、智を見上げ息を吸う。
「ぜっったいに!振り向かせてみせるから!
だから智、覚悟してね!」
俺の背丈を越える所に立つ智。
これは俺からの挑戦状だよ。
大「はぁ…お前ってほんと俺のこと好きなのな。」
何を今更。
てか好きじゃなくて大好き。だっての。
大「ふっ。受けて立とーじゃん。それ。
俺を、惚れさせてみろよ。」
そんなかっこいい台詞。
なのに智は「よろしく」と
ほにゃん。と笑った。
…あぁ…それ反則…
俺…真っ黒焦げ…
まださ、俺に春は来そうにない。
でも…春を迎える前の冬は来たんじゃない?
そう、思うことにした。
だって、俺メンタル強めだし?
大「和也。」
波の音しか聴こえない浜辺に、智の澄んだ声が響く。
「…」
また、呼んでくれた名前。
返事も忘れて、ただ智を見つめる。
大「受け止めろよ。」
「え?」
なにを…?
そう、問う前に
智は
極上の笑顔で
ふわり。
と、俺のもとへ飛んできた。
*おわり*
