
ギムレット
第20章 スプリッツァー 真実(シュウ編)
「入りなさい」
優しそうな男が障子の扉を開くと、時代劇で観た事がある将軍様がいるような大きな畳の広間が目に飛びこんだ。巨人男はスタスタと歩き上座に胡坐をかいて、やはり将軍様のように座った。
そして俺は、将軍様と対峙するように距離を開けて敷かれていた座布団に正座した。
俺はこうして巨人男と向かい合って改めて相手をじっくり観察した。
スラッとした体形と長身に着物がとてもよく似合っていた。
一見、その威厳ある風貌から年配の男だと思っていたが、こうして正面から見ると、年齢は40歳前後に思えた。
少しエラのはった輪郭に、少し硬そうな黒い髪、太い眉に重たそうな瞼。鼻筋の通った綺麗で大きな鼻に分厚い唇に浅黒い肌。
そして何よりも……人の奥底の心を読むような鋭い眼光。
俺が今まで出会ってきた子供に接する時の大人の目つきとは違っていた。
巨人男は、さっきと同じように聴き取りやすい低い声で、俺の目を真っすぐにみて言った。
「わしは偽善者ではない。そして、お前には2つの選択肢がある」と。
