ギムレット
第20章 スプリッツァー 真実(シュウ編)
俺はその後に優しそうな男の養子になることになる。
優しそうな男の名前は、向井 隼人。
残念ながら実の親と完全に縁を切る特別養子縁組制度の対象年齢(6歳未満まで)を過ぎていた為に、普通養子縁組だったため、血縁上の親と法的な親子関係が完全になくなることはなかったが、借金をチャラにする代わりに、一生、俺と祖父に関わらいという誓約書を書かせて、あいつは俺たちの前から完全に姿を消した。
向井隼人との養子縁組の手続きが終わった直後、祖父は癌でこの世を去った。
桐生幸助は俺に約束してくれたように、最後まで医療費等の面倒を見てくれた。
俺にとって大切なたった一人の家族であるじいちゃんは、苦しむことなく安らかな最期を迎えられた。
『向井 シュウ』
新しい名前を得て、森田蓮で生きてきた名前も人生も何もかもを捨てて、新しい運命を俺は生きていくことになった。