ギムレット
第5章 モヒート 心の渇きをいやして
「重たい?」そうタクに聞かれて私は首を横に振った。
「じゃあもう少しこのままでいい?メグの中から縮んで自然と出てくるまで」
そう言って笑う。私も微笑んで軽く頷いた。
SEXの後にすぐに体を離す男は好きじゃない。
ことが終わった後に「気持ちよかった?」そう聞かれるのも好きじゃない。
気持ちよかったかどうかは、相手の体の反応を感じとっていれば聞く必要はないと思うから。
独りよがりのセックスをする男ほど、相手の反応を言葉で確かめる。
お互いが体で確かめ合っていればそんなことを聞く必要はないのに。
私はことが終わっても相手の体温を感じていたい。
そして脈拍の早くなった相手の鼓動を自分の体で感じるのが好きだった。
興奮した体の余韻を感じていたかった。
力強く勃起していたものが通常の硬さに戻り、自然と私の体の中から離れた。
タクは体を密着させたまま、ティッシュでゴムを包んでゴミ箱にいれ、私の額に汗でまとわりつく髪を撫でて、私の額を自分の胸に押し付けて強く両手で抱きしめた後に、何か言いたげに私の顔を見た。
「好きだよ」そう言ってまた私に優しくキスをした。
「店があるビルのエレベーターで会った時も、源氏で会った時も、ずっと……メグのことが気になってた」
私を抱いている時までの高揚した魅惑的な顔とは違い、白い歯を見せて微笑む23歳の青年らしい素の顔。
「でも挨拶程度で、一度も声はかけてくれなかったはね」
私がちょっと意地悪く言うと
「メグは……なんか、声かけずらいっていうか……絶対に相手にされないっていうか……俺なんかに興味ない。って顔してたし」
「俺は、素は臆病なんだよ」
タクは少し口を尖らせていじけた子供っぽい顔をして、チラッと私を見た。
「でも、私を抱くとき、あなたは大胆だわ」
私の言葉に彼は頬を赤く染めた。