風鈴が鳴らない時
第2章 匂えど
仕方なくその日は、その小さな桐箱を持ち帰って明日の日曜日またフリーマーケットに持って行ってみようと思った。
その晩、僕は夢を見た───
眼鏡を掛けて白髭頭で髭がてんこ盛りの可愛いおじいちゃんが僕に言う。「わしは風鈴の化身である」って…がらがら声で僕に言う。
「風鈴の化身さん…フム…して拙者に何用でござるか?」
ナゼか僕は、お侍さんのコスプレをしていてノリノリだった。
「お前望みは?」
「のぞみ?…ノゾミ…望み、知り合いに望ちゃんって子は居ません…?」
「夢や希望、願い事は有るのか?と聞いている」
「あぁ…」
望ちゃんと旅してるお侍さん設定かと思った…。
折角お侍さんのコスプレをしてカッコつけてたのに、勘違いして恥ずかしくて…顔が赤くなっていく。僕は考え込むフリをして下を向いた。
おじいちゃんは、黙ってこちらの様子を見つめていた。
ちゃんと考えなくちゃ…。
「願い事かぁ~…」
願い事ってイザ聞かれると…思い付かないなぁ。
僕は天を仰いだ。
何も答えられずにいたら、おじいちゃんが痺れを切らしたのか…こう言った。
「まっすぐ30歩進み好きな方に曲がり25歩進み曲がり、15歩進み好きな方に曲がり10歩進んだ所で目を閉じよ」
「えぇ~っと…30、25、15、10?」
聞き返しておじいちゃんのいた方を見ても、もぅそこにおじいちゃんの姿は無かった。