風鈴が鳴らない時
第3章 散りぬる
僕はフリーマーケットが開かれている昨日と同じ駅に降りたった。
とりあえず自称風鈴の化身のおじいちゃんに言われた通り、見知らぬ角で曲がってみて…めぼしい所がなかったらフリーマーケットの昨日の店辺りに持って行こう!
僕はこの時、軽ぅ~い感じで曲がったのを、後悔する事になるなんて思いもしなかった。
1つ目の角を曲がった後、次の曲がり角に全然たどり着けずに一本道が続き…しかもドンドン細くなっている気がする。
ココで…もし火事が有っても消防車は入ってこれないんじゃないかなぁ?なんて不吉な事を考えながら、早歩きで前進した。
ぐにゃぐにゃ道をまっすぐ進むにつれ高い建物が見当たらなくなってきて、まるでタイムスリップしたような景観に僕は心細くなっていった。地図アプリも僕の位置が把握出来ないみたいで、円が時計回りにクルクル回っているだけで…余計に僕の不安を煽った。
やっと2つ目の角を曲がり、しばらく歩いて3つ目の角も見付けた。この頃には、僕は我ながらオリンピック選手並の競歩をみせてると自負していた。
3つ目の角を曲がると急に道が拓けて、雑居ビルや飲食店が目に入り一安心した。
僕は何も考えずに、古いベンチの様なところに腰かけて息を整える事にした。