テキストサイズ

じゃん・けん・ぽん!!

第17章 断章

 どうしようかと思いながら、裕子は薄闇の中を歩いている。相変わらずごみごみと家や工場や店などがひしめき合っている。道はとても狭い。
 ふと、光が見えた。
 街を覆う薄闇を、強烈な光が切り裂く。
 目を細めずにはいられないくらいの、強烈な光だった。
 大きな運搬車がやってくる。
 祐子は脇へ避けた。
 逆光でよくは見えないが、どうやら町田家具の車とは違うようだ。
 ――そういえば。
 この近くに工場ができるので、そのために大きな運搬車が、決まった時間に通るのだとか、晃仁が言っていた気がする。確か一日に三回だったろうか。時刻はよく覚えていないが、夕方の六時にもその車は通るのだという話は覚えている。でも、六時はとっくにすぎている。
 まあ、でも時間が変わることくらいあるか――とも思う。
 光が近づいてくる――。
 突然――。
 体が軽くなった。
 不思議と恐怖はなかった。苦痛も感じない。
 裸になって、自然の風を全身に浴びているかのような、意外にも爽やかな感覚だ。
 恍惚とした気分に浸るあまり、意識が遠くなっていく。
 裕子は意識のある限り、その恍惚感をゆっくりと感じた。
 いつまでも、いつまでも――快感は続くように感じられた。
 いつまでも、いつまでも――。
 永遠に――。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ