じゃん・けん・ぽん!!
第19章 じゃん・けん・ぽん!!
小さい体で目をくりくりさせていて、大抵は笑っている。
しかし、その笑みが詩織に向けられたことは、今までに一度もない。今もそうだった。その幼い顔に凛とした表情を浮かべて、じっと詩織の顔を睨んでいた。
「な――なに」
詩織が問いかけると、
「もう、そういうことやめろよ」
と晃仁は言った。やはり、晃仁は、詩織の心中など容易く見抜いていたのだろう。それも、かなり以前から。
「おまえ、そんなに人に好かれたいなら、素直に友達になりたいって言えよ。自分を殺して、演じて、何が楽しいんだよ。そうやって人の心を弄んで、僕はそんなお前が――」
大嫌いだ――と晃仁は言った。
「大嫌い――」
はじめて言われた言葉だった。それも、その初めての言葉を、こともあろうか男に言われるとは思っていなかった。喉が詰まって、一瞬だけ呼吸が止まった。
晃仁は表情を崩さず、さらに言った。
「もし、同じことをこの先に一回でもやったら、その時は徹底的に追い詰める。僕の持つすべての智力を使ってお前を叩きのめす。だから――」
覚悟しておけよ――と晃仁は言って、人混みの中へ消えていってしまった。。
詩織は、気が遠くなって倒れそうになった。
晃仁のあんな顔は初めてみた。さらに、追い詰めるとか、叩きのめすといった物騒な言葉がその口から発せられるのも、初めて聞いた。
――きっと。
きっと怖いんだろうな――と詩織は思った。
※
――いよいよ決着がつく。
健人は学の顔を見ていた。いや、睨んでいた――というべきか。別に憎んでいたわけではない。むしろ、学は襲撃から助けてくれた恩人だ。憎むはずがない。
それでも睨むように学の顔を見ていたのは、闘志が湧いていたからだった。負けないぞという思いから、つい目頭に力がこもってしまったのだ。
――負けるわけにはいかない。
そう思っていた。
詩織のためではない。裕子のためだ。
裕子には、結局三回も負けている。一回は勝ったが、それは信頼を裏切っての勝利だったから、勝ちには含みたくない。
しかし、その笑みが詩織に向けられたことは、今までに一度もない。今もそうだった。その幼い顔に凛とした表情を浮かべて、じっと詩織の顔を睨んでいた。
「な――なに」
詩織が問いかけると、
「もう、そういうことやめろよ」
と晃仁は言った。やはり、晃仁は、詩織の心中など容易く見抜いていたのだろう。それも、かなり以前から。
「おまえ、そんなに人に好かれたいなら、素直に友達になりたいって言えよ。自分を殺して、演じて、何が楽しいんだよ。そうやって人の心を弄んで、僕はそんなお前が――」
大嫌いだ――と晃仁は言った。
「大嫌い――」
はじめて言われた言葉だった。それも、その初めての言葉を、こともあろうか男に言われるとは思っていなかった。喉が詰まって、一瞬だけ呼吸が止まった。
晃仁は表情を崩さず、さらに言った。
「もし、同じことをこの先に一回でもやったら、その時は徹底的に追い詰める。僕の持つすべての智力を使ってお前を叩きのめす。だから――」
覚悟しておけよ――と晃仁は言って、人混みの中へ消えていってしまった。。
詩織は、気が遠くなって倒れそうになった。
晃仁のあんな顔は初めてみた。さらに、追い詰めるとか、叩きのめすといった物騒な言葉がその口から発せられるのも、初めて聞いた。
――きっと。
きっと怖いんだろうな――と詩織は思った。
※
――いよいよ決着がつく。
健人は学の顔を見ていた。いや、睨んでいた――というべきか。別に憎んでいたわけではない。むしろ、学は襲撃から助けてくれた恩人だ。憎むはずがない。
それでも睨むように学の顔を見ていたのは、闘志が湧いていたからだった。負けないぞという思いから、つい目頭に力がこもってしまったのだ。
――負けるわけにはいかない。
そう思っていた。
詩織のためではない。裕子のためだ。
裕子には、結局三回も負けている。一回は勝ったが、それは信頼を裏切っての勝利だったから、勝ちには含みたくない。