じゃん・けん・ぽん!!
第7章 発議
【発議】
暑いのは夏だからではない。
一瞬ではあったが、池田裕子はそう思った。
いや、校庭の土が、目の痛むほどに直射日光を照り返しているところを見れば、夏のために暑いことは間違いないのだが、今裕子が感じている暑さは、気温からくるものだけではない。そういった暑さがないではないが、八割は自分の内側から湧き上がっている熱だった。だから〝暑い〟というよりは〝熱い〟というべきかもしれない。
鼓動は、頭がじくじくと痛むほどに激しく鳴り響き、頬はおでんのはんぺんを当てているかのようにじわりとした熱を持っている。
そして呼吸はいつになく乱れていた。運動の得意は裕子は、真夏の昼間に走ってもさほど疲れないというのに、今はそんな時よりもよっぽど呼吸が苦しかった。浅い息を短く何回も繰り返す。
どうしてここまで熱く、そして呼吸が乱れているのかといえば、それは思ってもみないことが突然に起こったからだった。
生徒会室である。
室内は薄暗いが、強烈な日光が差し込んできている。その日光は、明るいというよりは眩しくて目障りだった。
薄暗くも眩しい室内には、生徒会の役員が集まっている。
いつもなら、形式的にことを済ませて終わるはずのつまらない集まりだが、今回は違った。
意見が出たのだ。
「下駄箱のすべてを取り替えてほしいという意見が出ています」
意見を言ったのは、評議委員のひとりだった。
はじめは突っぱねた。一年生の辻岡健人とかいう男の子からも同じことを言われていたから、それが今回意見として出されただけだろうと、そう思っていた。しかし違った。
下駄箱の交換を発議した評議委員は、意見と同時に分厚い紙束を裕子に渡したのだった。
なんだろうと思って見てみると、それは名簿だった。
ざっと百枚はあるだろう。裕子は、その一枚一枚をぺらぺらとめくってみた。どの紙にも、びっしりと直筆と思われる名前が書かれていた。
暑いのは夏だからではない。
一瞬ではあったが、池田裕子はそう思った。
いや、校庭の土が、目の痛むほどに直射日光を照り返しているところを見れば、夏のために暑いことは間違いないのだが、今裕子が感じている暑さは、気温からくるものだけではない。そういった暑さがないではないが、八割は自分の内側から湧き上がっている熱だった。だから〝暑い〟というよりは〝熱い〟というべきかもしれない。
鼓動は、頭がじくじくと痛むほどに激しく鳴り響き、頬はおでんのはんぺんを当てているかのようにじわりとした熱を持っている。
そして呼吸はいつになく乱れていた。運動の得意は裕子は、真夏の昼間に走ってもさほど疲れないというのに、今はそんな時よりもよっぽど呼吸が苦しかった。浅い息を短く何回も繰り返す。
どうしてここまで熱く、そして呼吸が乱れているのかといえば、それは思ってもみないことが突然に起こったからだった。
生徒会室である。
室内は薄暗いが、強烈な日光が差し込んできている。その日光は、明るいというよりは眩しくて目障りだった。
薄暗くも眩しい室内には、生徒会の役員が集まっている。
いつもなら、形式的にことを済ませて終わるはずのつまらない集まりだが、今回は違った。
意見が出たのだ。
「下駄箱のすべてを取り替えてほしいという意見が出ています」
意見を言ったのは、評議委員のひとりだった。
はじめは突っぱねた。一年生の辻岡健人とかいう男の子からも同じことを言われていたから、それが今回意見として出されただけだろうと、そう思っていた。しかし違った。
下駄箱の交換を発議した評議委員は、意見と同時に分厚い紙束を裕子に渡したのだった。
なんだろうと思って見てみると、それは名簿だった。
ざっと百枚はあるだろう。裕子は、その一枚一枚をぺらぺらとめくってみた。どの紙にも、びっしりと直筆と思われる名前が書かれていた。