じゃん・けん・ぽん!!
第10章 カウンター発動!!
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裕子が喫茶かじかで落ち込んでいた時に、西岡晃仁という一年生と会って悩みを打ち明けたところ、とある策を授かった。
数には数です――。
晃仁はそう言った。
「どういうこと」
裕子が詳しく説明してほしいと頼むと、晃仁は注文した烏龍茶をひと口飲んでからこう言ったのだった。
「そのまんまの意味です。名前を書いているのがおもに男子なんですから、こちらはその逆、手遅れにならないうちに、女子を取り込むんです、部活ごとに。そして、その女子たちには、下駄箱の交換とは別の要望を出してもらうんです。お金のかかるような要望がいいですね。例えば――」
晃仁は腕を組んでしばらく考えた後に、
「空調の設置なんてどうでしょう」
と言った。
「今はちょうど夏ですから、授業中の暑さへの対策を望んでいる生徒は多いと思います。きっと支持を得られると思いますよ」
なるほど――と裕子は思った。
要望にお金のかかるものを選ぶことで、予算面からも下駄箱交換派に対抗できるということだ。
理屈は分かる。だが――。
「そんなにたくさんの人を、一週間以内に取り込むなんて、できるかな」
「難しいですが、不可能ではないと思います。僕に任せてください」
そう言って、晃仁はひと足先に店を後にした。
そして昨日――。
晃仁は宣言通り、女子を中心とした署名を集めて持ってきたのだった。要望はもちろん、全教室への空調の設置だ。
どんな手を使ったのかは知らないが、とにかくそのおかげで、下駄箱の交換に対抗することができたのだ。
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下駄箱の交換と空調の設置というふたつの要望は、希望者の数で拮抗した。そして両立することは、予算の面からして無理だという。これで、下駄箱の交換は免れることができるかもしれない。少なくとも時間稼ぎにはなるはずだ。