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じゃん・けん・ぽん!!

第11章 対立!!

【対立!!】

 刺々しさを通り超えて、むしろ微笑ましささえ感じるほどだった。
 学校じゅう、どこを歩いても、喧嘩をしている姿が多数見られる。が、喧嘩といっても肉弾戦ではない。口喧嘩だ。それでも校内じゅうでとなると、さすがに騒がしい。
 喧嘩をしているもの同士のほとんどは、男子生徒対女子生徒の対立だった。一対一で言い合っている生徒もいれば、大人数対大人数でやり合っている生徒もいる。中には大勢を相手にとって一人で奮戦している姿さえ見られる。
 対立の原因はほかでもない。予算を空調設備に投入するか、それとも下駄箱の全交換につぎ込むか――だ。女子生徒のほとんどは空調の導入に賛成しており、男子生徒は下駄箱の全交換を主張している。
 ほとんど水掛け論しか見られないので、このままでは百年争っても決着はつかないだろう。対立は激しいが、言葉は幼稚だ。そこに、馬鹿馬鹿しさを含んだ微笑ましさが感じられる。
 池田裕子は、そんな不毛な言い争いに横目をくれながら、廊下を歩いていた。
 廊下は夕焼けを浴びて赤く染まっており、外からは蝉の声がかなかなと聞こえてくる。校舎いっぱいに広がる対立の声は、蝉しぐれを凌駕するものがある。つまり、とてつもなくうるさい。その上、蝉と違ってまるで風情がない。
 聞いているだけでいらいらしてくるが、この対立のきっかけは裕子自身にもあるから文句は言えない。
 厭になった。自分も、周囲も。
 そして父も。
 うんざりとしながら、祐子はそのまま図書館へ入った。

 ※

 さすがに図書館の中は静かだった。
 ほとんど人がいないというのも静かな原因のひとつかもしれないが、わずかにいる生徒も、読書や学習に勤しんでいて、騒いでいる余裕などないようだ。
 ここにいれば戦火は免れられるだろう。
 裕子は安心して息をつくと、もっとも近くの席へ向かった。休もうと思ったのだ。

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