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じゃん・けん・ぽん!!

第11章 対立!!

 椅子を引いて腰をおろす。
 そのまま首をくたりと前へ折り曲げる。同時に――。

「あれ、会長さんじゃないですか」

 頭の上から声が降ってきた。
 折り曲げた首を伸ばして見上げると、ふさふさとした茶髪をなびかせた、丸い顔があった。
「ああ、ええと」
 名前を思い出せずにいると、
「西岡晃仁です」
 と、向こうが先に名乗った。そうだった。小柄な体はまるで小学生のようだが、その奸計の才は侮れない。校内のそこここで対立が見られるのは、彼の奸計がうまく働いたからと言える。
「うまく、いきましたね」
 いたずらっぽい笑みを浮かべて、晃仁は裕子の向かいの席へ座った。
 確かに上手くいった。今のところ、下駄箱の交換はせずに済んでいる。しかし、校内がここまで荒れるとは思っていなかった。この荒れ様は代償としては大きすぎる。
「どうやって、何をやったの」
 祐子が問いかけると、晃仁は、なあに、簡単なことですよと言って、人差し指で鼻の下を擦った。
「三年生の先輩、四人に声をかけたんです」
「四人って、誰」
「ええと・・・・・・」
 晃仁は視線を上にあげると、片手の指を折りながらぽつりぽつりと語った。
「茶道部、華道部、薙刀部、手芸部の部長さんたちです」
「茶道部、華道部・・・・・・」
 晃仁が並べた部名を、祐子は繰り返す。それをしばらく考えると、ようやくこの童顔の策士が何をしたのかを理解した。
「どれも、女子生徒が多い部だね」
「そうなんです。下駄箱の交換を嘆願する人たちは、みんな男子生徒でしたよね。嘆願書には、その人たちの名前が部活ごとに纏まってました」
 うんうん、と祐子は頷く。
「部活ごと、というのが目の付け所です。下駄箱交換派の男子にしても、空調設備導入派の女子にしても、これだけの人数を扇動するのは大変です」
「だから各部の部長に声をかけて、部長から部員に上意下達で空調設備導入への賛同を勝ち取ったってこと?­」
「そうです。きっと、下駄箱交換派の男子も同じような形で賛同者を集めたんだと思います」

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