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じゃん・けん・ぽん!!

第11章 対立!!

「それは――いや」
 学は、一瞬だけ逡巡したような様子を見せてから、
「わ、わかった。必ず明日には返す」
 と力なく言った。
「言ったね」
 念を押す。学は一拍の間をおいてから、一度だけ深く頷いた。
「約束だからね」
「分かった。明日までは待ってくれ。すぐに――」
 何かを言いかけて、学はすぐに口をつぐんだ。そして、
「じゃ、明日」
 と言い残して、学は図書室を出ていった。
「ふう」
 思わずため息が漏れる。咄嗟に話を反らせてノートを返せと迫ったのが効いたのかもしれない。なんとか暴力沙汰は避けられた。
 それにしても、なぜ学はノートを返さないのだろう。それが分からなかった。決して難しいことではないはずなのに。
 ともあれ、被害者も加害者も出さずに済んだことに、祐子は安堵していた。

「ありがとうございました」

 背後から、弱々しい声が聞こえた。
 振り返ると、童顔の軍師が立ち上がりかけていた。
「会長のおかげで助かりました。会長って、強いんですね」
「いや」
 決して強くはない。少なくとも、あの岩のような大男に勝てるほどの腕力は持っていない。ただ、勢いよく言葉を発し続けたことで押し切ったのだ。そう説明すると、それでも凄いですよと晃仁は言った。そしてもう一度、ありがとうございますと頭をさげる。
「いや、いいんだけどさ――」
 問題は、いま学校全体で起きている対立だ。このままにはしておけない。原因のひとつは自分にもあるのだから、なおさらだ。
「なんとかならないかな、対立」
 裕子はあらためて晃仁に相談を持ちかけた。彼なら何か捻り出してくれそうな気がしたのだ。
「ううん」
 と晃仁は唸った。そして、
「じゃんけんなら、いいんじゃないでしょうか」
 と言った。
「え」
 ――じゃんけん?­

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