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じゃん・けん・ぽん!!

第11章 対立!!

 急に大きな音と声を上げたおかげで、周りの生徒が注目している。しかし、それを気にしている場合ではないと祐子は思った。
 学が怯んだ隙に、裕子は畳み掛ける。
「〝え〟じゃないでしょ! ノートを貸してからどのくらい経ってると思うの! いい加減返して! 勉強にならないでしょ!」
 捲し立てながら、裕子は机を回り込んで学の前に立ちはだかる。
「だいたいね、汚い手とか言うけど、もともとそっちがそういう手を使ったんでしょ」
 言葉を続けながら、祐子はずんずんと学との距離を詰めていく。反対に、学は少しずつ後ろへ引いていく。
 意外な展開だったが、好都合だった。学としては、さすがに女子生徒を相手に手を上げることはできないのだろう。かと言って、言い返すことも出来ないので下がるしかないのかもしれない。
 あまり気は進まないが、ここは自分が女であるということを最大限利用して学を撃退しようと裕子は考えた。
「小さい下級生に手をあげて恥ずかしくないの! この子を殴るんだったら、まず私を殴りなさい!」
 殴れないだろうという算段があっての見栄だった。しかし、もし学が本気で怒っていたのなら殴ってくるかもしれない。女であることの強みを生かすこの見栄は、両刃の刃だった。
 祐子は壁際まで学を追い詰めると、そこで止まって、きりっと学の顔を睨みあげた。
 学はといえば、まるで刃物を喉元に突きつけられたかのように、顎をあげて固まっている。
 その学の喉仏が、ごくりと音を立てて上下した。
「す、すまん」
「すまんじゃなくて、ノート返して!」
 すぐさま、祐子は言い返した。直感で、手を緩めてはいけないと思ったのだ。
「わ、わかった。明日には返す」
「本当に?­」
「本当に」
「本当に本当?­」
「絶対返す」
「それなら良いけど」
 裕子は腕組みをして、少し考えたあと、もう一度学の顔を見あげて、
「それじゃ、もし明日返さなかったら――」
 全裸で校内一周してよね――と言った。
「え!?」
 さすがに学は目を向いた。
「そ、それはさすがに」
「なに、できないの?­ ノートが返せばやらなくて済むんだから、どんな約束だってできるでしょ。それとも――」
 何かノートを返せない理由でもあるの――と祐子は問い詰めた。
「それは――」
「それは?­」

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