じゃん・けん・ぽん!!
第13章 会長のヒ・ミ・ツ
「正直に話してよ!」
裕子は眉間に力を込めながら、やや語気を荒らげた。
すると、小柄な後輩は、いたずらを咎められた子供のような情けない顔で、裕子の顔を上目遣いにちらりと見た。
――かわいい。
一瞬そう思ったが、今はそれどころではない。味方が敵に寝返りを打つ恐れがあるからだ。晃仁が敵に回ることだけは、なんとしても阻止したい。
「本当に、なんでもないです」
「なんでもないなら、どうしてそんなに、おどおどしてるの」
裕子の詰問に、晃仁は、見上げていた視線を落として黙ってしまった。
「なんで何にも言わないの!」
思いが爆発しそうになるのを、裕子は唾を飲んで堪える。そんな裕子の態度を見て、晃仁は隠しきれないと思ったのだろうか。いかにも渋々といった様子で、
「実は――」
ぽつりとそう言った。そして学に対して、もう一度ノートを出してももらえませんかと言った。
――ノート?
事情が飲み込めない。ノートというのは、もしかしたら祐子が学に貸したノートのことだろうか。だとしても、それがどうしてここで出てくるのか理解できなかった。
なので何も言えずに様子を見ていると、学は晃仁の頼みに、やっぱり渋々と行った様子で、自分の鞄の中からノートを取り出した。そのノートは、案の定、裕子のものだった。
学は、それを裕子に差し出す。なんの言葉もなく、そして礼も言わずに。
裕子も黙ったままそれを受け取った。学がどうして、急に裕子に対して冷たくなったのか、また下駄箱交換の件に至っては敵に回ったのか、その理由は今でもわからない。といって、なんとなくそれを訊く気にもなれない。自然と、学との間には重たいものが淀む。
とても気まずかった。しかし裕子よりも、また学よりも、さらに気まずさを感じたのは晃仁だったのだろう。二年も先輩に当たる二人が、目の前で暗黙を通した対立をしているのでは、滅入るのも分かる。その雰囲気を打破するためか、晃仁は、おそらく無理と、明るい声で言った。
「ノート、見つかって良かったですね!」
そしてやはり、これも無理をして作ったであろう笑みを浮かべた。
「うん」
裕子はふたりに背中を向けて、受け取ったノートを鞄に仕舞おうとした。その時だった。
何かが――落ちた。
裕子は眉間に力を込めながら、やや語気を荒らげた。
すると、小柄な後輩は、いたずらを咎められた子供のような情けない顔で、裕子の顔を上目遣いにちらりと見た。
――かわいい。
一瞬そう思ったが、今はそれどころではない。味方が敵に寝返りを打つ恐れがあるからだ。晃仁が敵に回ることだけは、なんとしても阻止したい。
「本当に、なんでもないです」
「なんでもないなら、どうしてそんなに、おどおどしてるの」
裕子の詰問に、晃仁は、見上げていた視線を落として黙ってしまった。
「なんで何にも言わないの!」
思いが爆発しそうになるのを、裕子は唾を飲んで堪える。そんな裕子の態度を見て、晃仁は隠しきれないと思ったのだろうか。いかにも渋々といった様子で、
「実は――」
ぽつりとそう言った。そして学に対して、もう一度ノートを出してももらえませんかと言った。
――ノート?
事情が飲み込めない。ノートというのは、もしかしたら祐子が学に貸したノートのことだろうか。だとしても、それがどうしてここで出てくるのか理解できなかった。
なので何も言えずに様子を見ていると、学は晃仁の頼みに、やっぱり渋々と行った様子で、自分の鞄の中からノートを取り出した。そのノートは、案の定、裕子のものだった。
学は、それを裕子に差し出す。なんの言葉もなく、そして礼も言わずに。
裕子も黙ったままそれを受け取った。学がどうして、急に裕子に対して冷たくなったのか、また下駄箱交換の件に至っては敵に回ったのか、その理由は今でもわからない。といって、なんとなくそれを訊く気にもなれない。自然と、学との間には重たいものが淀む。
とても気まずかった。しかし裕子よりも、また学よりも、さらに気まずさを感じたのは晃仁だったのだろう。二年も先輩に当たる二人が、目の前で暗黙を通した対立をしているのでは、滅入るのも分かる。その雰囲気を打破するためか、晃仁は、おそらく無理と、明るい声で言った。
「ノート、見つかって良かったですね!」
そしてやはり、これも無理をして作ったであろう笑みを浮かべた。
「うん」
裕子はふたりに背中を向けて、受け取ったノートを鞄に仕舞おうとした。その時だった。
何かが――落ちた。