じゃん・けん・ぽん!!
第13章 会長のヒ・ミ・ツ
くまごろーの家はすぐに見つかった。
どんなケーキがあるのだろうか、と期待しながら店の扉をひらいた裕子だったが――。
「あ」
真っ先に目に入ったのは、ケーキではなく、学と晃仁の姿だった。ふたりして、ひとつの机を挟んでケーキを食べている。いや、何かについて話し合っているらしい。
厭な予感がした。晃仁は裕子のために知恵を絞ってくれた。そして、実際にその知恵は功を奏し、空調設置希望の旗の元に、下駄箱交換派に対抗できるだけの人数を集めることができたのだ。
一方、学は下駄箱交換派としての立場を表明している。
つまり、味方であるはずの晃仁と、敵である学が、ともにケーキを食べている、ということだ。
「いらっしゃいませ、お一人様ですか」
という店員の言葉に、裕子は待ち合わせ相手が入っていますとだけ答え、不安を抱きながらゆっくりと学たちのいる席に近づいて行った。
よほど真剣に話しているのだろう。内容はよく分からないが、すでに学の背中に手が届くくらいまで近づいているというのに、二人は裕子に気づかない。学は裕子に背中を向けているから気づかないのも無理はないが、その向かい側に座っている晃仁まで気づかないのはやや妙だと思った。
ねえ、と声をかけようとした矢先だった。二人は話を終えたらしく、同時に席を立とうとした。その時になって、ようやく晃仁が裕子の存在に気づいたようだ。
「あ、会長さんじゃないですか」
その晃仁の言葉で、学も気づいたらしい。学は首を捻ると、肩越しに裕子を見た。
一瞬、目が合う。しかし学はすぐに視線を反らせてしまった。学は後頭部を裕子に見せて、椅子に座り直した。晃仁も、浮かしかけていた腰を再び椅子に落ち着けた。
「何を、話していたの」
答えを聞きたい一方で、また答えを聞きたくなかった。敵と味方であるはずの二人が会っている理由について、祐子が想像する限りでは〝裏切り〟以外の理由が見えなかったからだ。
裕子の質問に、晃仁は、
「その、大したことじゃないですよ」
と歯切れの悪い返事をした。
大したことがないなら、言えるはずだ。なのに内容をあえて言わないということは、きっと大したことなのだ。
どんなケーキがあるのだろうか、と期待しながら店の扉をひらいた裕子だったが――。
「あ」
真っ先に目に入ったのは、ケーキではなく、学と晃仁の姿だった。ふたりして、ひとつの机を挟んでケーキを食べている。いや、何かについて話し合っているらしい。
厭な予感がした。晃仁は裕子のために知恵を絞ってくれた。そして、実際にその知恵は功を奏し、空調設置希望の旗の元に、下駄箱交換派に対抗できるだけの人数を集めることができたのだ。
一方、学は下駄箱交換派としての立場を表明している。
つまり、味方であるはずの晃仁と、敵である学が、ともにケーキを食べている、ということだ。
「いらっしゃいませ、お一人様ですか」
という店員の言葉に、裕子は待ち合わせ相手が入っていますとだけ答え、不安を抱きながらゆっくりと学たちのいる席に近づいて行った。
よほど真剣に話しているのだろう。内容はよく分からないが、すでに学の背中に手が届くくらいまで近づいているというのに、二人は裕子に気づかない。学は裕子に背中を向けているから気づかないのも無理はないが、その向かい側に座っている晃仁まで気づかないのはやや妙だと思った。
ねえ、と声をかけようとした矢先だった。二人は話を終えたらしく、同時に席を立とうとした。その時になって、ようやく晃仁が裕子の存在に気づいたようだ。
「あ、会長さんじゃないですか」
その晃仁の言葉で、学も気づいたらしい。学は首を捻ると、肩越しに裕子を見た。
一瞬、目が合う。しかし学はすぐに視線を反らせてしまった。学は後頭部を裕子に見せて、椅子に座り直した。晃仁も、浮かしかけていた腰を再び椅子に落ち着けた。
「何を、話していたの」
答えを聞きたい一方で、また答えを聞きたくなかった。敵と味方であるはずの二人が会っている理由について、祐子が想像する限りでは〝裏切り〟以外の理由が見えなかったからだ。
裕子の質問に、晃仁は、
「その、大したことじゃないですよ」
と歯切れの悪い返事をした。
大したことがないなら、言えるはずだ。なのに内容をあえて言わないということは、きっと大したことなのだ。