じゃん・けん・ぽん!!
第13章 会長のヒ・ミ・ツ
「お母さんがね、西瓜を買ってきたの。それを家族で食べていたんだけど、私の食べていた西瓜に、勝手に塩をかけたんだよ、お父さんが」
ぽつりぽつりといった感じで、裕子はそう言った。そしてまた黙り込んでしまった。
晃仁は、また裕子の次の言葉を待った。
しかし、どれだけ待っても裕子は喋ろうとしなかった。さすがに耐えられなくなって、
「それで、どうしたんですか」
と、晃仁は先を促した。しかし裕子は、きょとんした表情で晃仁に視線を向けて、
「それでって?」
逆に訊き返してきた。湿った睫毛が、ぱちぱちと上下する。
「いえ、ですから、それで、どうしてお父さんと仲が悪くなってしまったんですか」
「どうしてって、いま話したのが仲の悪くなった理由だよ」
「え・・・・・・」
「だってさ」
それまでぼんやりとした表情をしていた裕子は、急に色を取り戻したように目を輝かせて、しかも力強い声で語り始めた。
「スイカの美味しさは甘さにあるでしょ! そこになんで塩をかけるの? 塩味が甘みを際立たせるっていうけど、それは塩を舐めてから西瓜を食べた場合でしょ? いっしょに食べたら味が混ざっちゃうじゃん! せっかくの西瓜が台無しだよ!」
捲し立てるようにそう言った裕子は、言い終わってから息を切らせていた。
――たったそれだけのことで。
と思いはしたものの、さすがに口にはできなかった。裕子のことをそれほど知っている訳ではないが、ここまで熱弁を振るうとは思わなかった。よほど溜め込んでいたのだろう。
晃仁は、裕子が話した内容と、ノートの筆跡から分かったことを頭の中で整理しながらゆっくりと言った。
「つまり会長さんは、自分のスイカにお父さんが塩をかけたことに怒って、それでお父さんと仲が悪くなってしまったということですか」
「うん」
「それで、お父さんと仲直りしたくて、手紙を書いたんですか」
「そう、さすが晃仁くんは察しがいいね」
「いやあ」
晃仁は照れくさくなって後頭部をかいた。
ようやく腑に落ちた。そういう経緯があるなら、「スイカ」「お父さん」「塩」「ごめん」の四つの単語も繋がって見える。
ぽつりぽつりといった感じで、裕子はそう言った。そしてまた黙り込んでしまった。
晃仁は、また裕子の次の言葉を待った。
しかし、どれだけ待っても裕子は喋ろうとしなかった。さすがに耐えられなくなって、
「それで、どうしたんですか」
と、晃仁は先を促した。しかし裕子は、きょとんした表情で晃仁に視線を向けて、
「それでって?」
逆に訊き返してきた。湿った睫毛が、ぱちぱちと上下する。
「いえ、ですから、それで、どうしてお父さんと仲が悪くなってしまったんですか」
「どうしてって、いま話したのが仲の悪くなった理由だよ」
「え・・・・・・」
「だってさ」
それまでぼんやりとした表情をしていた裕子は、急に色を取り戻したように目を輝かせて、しかも力強い声で語り始めた。
「スイカの美味しさは甘さにあるでしょ! そこになんで塩をかけるの? 塩味が甘みを際立たせるっていうけど、それは塩を舐めてから西瓜を食べた場合でしょ? いっしょに食べたら味が混ざっちゃうじゃん! せっかくの西瓜が台無しだよ!」
捲し立てるようにそう言った裕子は、言い終わってから息を切らせていた。
――たったそれだけのことで。
と思いはしたものの、さすがに口にはできなかった。裕子のことをそれほど知っている訳ではないが、ここまで熱弁を振るうとは思わなかった。よほど溜め込んでいたのだろう。
晃仁は、裕子が話した内容と、ノートの筆跡から分かったことを頭の中で整理しながらゆっくりと言った。
「つまり会長さんは、自分のスイカにお父さんが塩をかけたことに怒って、それでお父さんと仲が悪くなってしまったということですか」
「うん」
「それで、お父さんと仲直りしたくて、手紙を書いたんですか」
「そう、さすが晃仁くんは察しがいいね」
「いやあ」
晃仁は照れくさくなって後頭部をかいた。
ようやく腑に落ちた。そういう経緯があるなら、「スイカ」「お父さん」「塩」「ごめん」の四つの単語も繋がって見える。