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じゃん・けん・ぽん!!

第15章 第2回戦

【第2回戦】

 ――今さら戻ってこられても。
 一回戦が終わった。健人は裕子の口車に乗せられて、まんまと一本取られてしまった。それでいったん、またグラウンドの南に用意されている椅子へ戻ったところだ。
 全部で三回戦。そのうちの一本を取られてしまったのだから、もう後がない。健人としては、どうしても残りの二回で勝利を勝ち取るしかない。
 明暗を分ける第二回戦では、さてどうするべきか――そう考えていると、そこへ、ひょっこりと晃仁が戻ってきたのだった。
「おせーよ!」
 と健人が文句をつけると、
「ごめん、ごめん」
 と晃仁は、息を切らせながら謝った。晃仁は両手を膝について、丸めた背中をすぼめたり膨らませたりしている。どうしたのか知らないが、やけに疲れているらしい。暑さのせいもあるだろうが、それだけではない気がする。
「どうした」
 健人が尋ねると、
「敵の妨害に遭った」
 晃仁はそう答えた。
 なんでも、数人の上級生に無理やり足止めされていたのだという。
「大丈夫だったのか」
 健人は椅子から立ち上がって、晃仁に駆け寄った。そして、その小柄な体を確かめてみる。
 どうやら怪我はないようだった。汚れも見られないから、暴力を受けたということもないだろう。晃仁も、大丈夫大丈夫と言って、健人の心配に答えた。
「それより――」
 晃仁は一度深く息を吐いて息を整えると、
「頼みがある」
 そう言った。
「頼み?­」
「健人、次の戦い、頼むから――」
 負けてくれ――と晃仁は言った。
「なんだと」
 意外な言葉に、健人は問い返さずにいられなかった。
「どういうことだよ」
「実は――」
 そして晃仁は、その理由を語った。
 妙な話だった。下駄箱の裏に、裕子の書いた手紙が滑り込んでいて、それを見られたくないから下駄箱交換をしたくない――というのだ。
 そんな理由で、この大騒ぎが起こったのだろうか。
 なんだか信じられない。いや、それよりも――。

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