
じゃん・けん・ぽん!!
第16章 暗中躍動
【暗中躍動】
――どこかで見ているはずだ。
とはいえ、探偵や警察ではないから、小型化した機械で盗撮や盗聴をする、といった真似はしないだろう。女子高生が探偵なんてやるはずがない。たとえ架空の話――たとえば小説の中の話――だったとしても、だ。女子高生が探偵をやるような小説があったら、是非にも読んでみたいと思う。でも、たぶんないだろう。
ともかく、そうした特別な器具を使ったりするのではなく、離れた場所から、気づかれないように、そっと見ているはずだ。肉眼で。
実際のところは分からないが、そういう前提で動いた。
誰もいない。生徒のほとんどはすでに帰ってしまっている。教師も、職員室に二、三人いる程度だろう。
まだ夜ではないが、すでに外は暗い。昼間は喧しいほどの蝉時雨も、この時刻にもなると鳴きやんでいる。
とても静かだった。
学校の、生徒用の玄関である。
その静かな、そしてほんのりと薄暗い空間に、晃仁と健人はいた。
健人が毒牙にかかっていることを教える――。
晃仁はそう宣言して、この時間に、この場所へ健人をここへ呼んだのだった。
遠くに人影が見えた。あれが、敵か味方はわからない。それを見届けてから、晃仁は言った。
「会長がなくした手紙を回収したいんだ。だから、手伝ってほしいんけど」
「手紙? なんだか話が違うじゃないか。俺が、その、毒牙にかかっているとかいうのを教えてくれるんじゃないのか」
「うん、そうなんだけど、手紙を回収すれば、それが分かると思う」
ふうん――と健人は唸った。納得した――というわけではないだろう。面倒臭いから、とりあえず言うことを聞いておこう、とでも思ったに違いない。それでも良かった。晃仁は、三年生の下駄箱を手のひらで軽く触りながら、健人に言った。
――どこかで見ているはずだ。
とはいえ、探偵や警察ではないから、小型化した機械で盗撮や盗聴をする、といった真似はしないだろう。女子高生が探偵なんてやるはずがない。たとえ架空の話――たとえば小説の中の話――だったとしても、だ。女子高生が探偵をやるような小説があったら、是非にも読んでみたいと思う。でも、たぶんないだろう。
ともかく、そうした特別な器具を使ったりするのではなく、離れた場所から、気づかれないように、そっと見ているはずだ。肉眼で。
実際のところは分からないが、そういう前提で動いた。
誰もいない。生徒のほとんどはすでに帰ってしまっている。教師も、職員室に二、三人いる程度だろう。
まだ夜ではないが、すでに外は暗い。昼間は喧しいほどの蝉時雨も、この時刻にもなると鳴きやんでいる。
とても静かだった。
学校の、生徒用の玄関である。
その静かな、そしてほんのりと薄暗い空間に、晃仁と健人はいた。
健人が毒牙にかかっていることを教える――。
晃仁はそう宣言して、この時間に、この場所へ健人をここへ呼んだのだった。
遠くに人影が見えた。あれが、敵か味方はわからない。それを見届けてから、晃仁は言った。
「会長がなくした手紙を回収したいんだ。だから、手伝ってほしいんけど」
「手紙? なんだか話が違うじゃないか。俺が、その、毒牙にかかっているとかいうのを教えてくれるんじゃないのか」
「うん、そうなんだけど、手紙を回収すれば、それが分かると思う」
ふうん――と健人は唸った。納得した――というわけではないだろう。面倒臭いから、とりあえず言うことを聞いておこう、とでも思ったに違いない。それでも良かった。晃仁は、三年生の下駄箱を手のひらで軽く触りながら、健人に言った。
