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妖魔の憂鬱

第2章 人成らざる者

この世の全てを統べる者と言える、人成らざる者達の長が全世界の大小様々なイサカイを、一々鎮圧に向かわせる事は無い。

そして同種だからといって、共に行動する訳ではない人成らざる者達が長を敵に回す事は、自分以外の全てを敵に回す事と略同等の危険性が有る。

従ってお互いがWinWinの関係で有る以上、長に逆らう者は無かった。



歴代の長達には実体があり、前の長は人狼だった。

人狼は文字通り、人も狼とも言える生き物だ。人よりは並外れた嗅覚や体力、統率力や闘争心が有り、狼より広く良くモノを考え、見た目は人に似せ二足歩行が出来た。長距離の移動となると、速度の限界は飛行機等を使う人間と変わらない。

黒羽(くれは)は長からの詮索を避け、人間達からの監視がより甘い土地を探し、揉め事を避け転々と生息地域を移動して、優月や壱星が居るこの土地までやって来た。

今の長は九尾。九尾は世界中に有る神社や仏閣、寺院に教会をも出入口として移動出来る。

人間が理解しやすいように説き分け、それぞれの文明や文化に合わせただけで、別物の様に語られているが、信じると言う概念から存在するそれらの建物は、実は繋がっている。

ここまで逃げて来た意味が無くなってしまった黒羽には、今の長は厄介な存在だ。



ともかく人成らざる者達は、壱星の様に人間らしく生計を立てる必要は全く無い。


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